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いら☆くまっ!(目覚めた)

見た目は大学生・頭脳はエロゲ脳なイラックマによるエロゲーレビューブログ

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【レビュー】 もしも明日が晴れならば

『Sultan』『DearMyFriend』に続く、NYAON&くすくす第3作。
2006年の作品なので、名作としてまだ記憶に新しい方も多いんじゃないでしょうかね。

珍しくマジメなレビューです。
こんなにマジメに考察系レビュー書いたのは初めてだ。


シナリオ・・・35/40点

最初から死んでるヒロイン、所謂「シンデル」(死語?)が主役の作品。

それ故に最初から暗いストーリーかというとそうでもなく、序盤は幽霊ということすら忘れるほど明るいムードでした。
しかし、設定上「最終的にもう一度別れが来る」という背景があるからこそ、どことなく
全体的に切ない雰囲気が漂っています。この辺の作りは巧いですね。

ところで、このゲームのヒロインほぼ全員(明穂以外?)に共通することとして、「自分が嫌いである」ということがあります。
つばさは姉に対して嫉妬する自分が、珠美は鬼切りとして明穂まで斬らなくてはならない運命なのにそれでも主人公が恋しい自分が、
千早は明穂を殺してしまったのに、存在し、そのうえ主人公にまだ好意を抱いている自分が、嫌い。

先に言ってしまうと、この物語のオチは全ルートとも、その「嫌い」を全部明穂が許すことで締められます。

「主人公と一緒にいたい」という願いが一度潰えてしまった経験があるからこそ、幽霊の自分なんかよりは
他のヒロインたちに幸せになってほしいと、自分の気持ちを押し殺してヒロインを応援し、
各ルートでの主人公とヒロインを結びつけるクライマックスシーンの裏方にあえて回るわけですね。

涙腺大決壊確実な計算し尽くされたストーリーですが、残念なのは明穂の心情描写の少なさ。
「なぜいきなり応援方に回る気になったのか?」という心が全くわからないのでちょっと不自然。
もう少し上の「主人公と一緒に~」あたりからの部分に関する独白シーンなど入れていれば
もっと繊細なストーリーになって明穂も救われることになったろうに。

じゃあ明穂自身のルートはどうなんだというと、こちらもあまり優遇はされていません。

終盤で、徐々に体が弱って姿が薄れてくる明穂に主人公は耐えられなくなり、「お前はもう必要ない」と
泣く泣く明穂の存在意義を否定することで成仏させようとします。

後々主人公はそれを激しく後悔し、携帯電話を通して明穂の存在意義をもう一度認め、
「生まれ変わっても一緒だよ」と今度こそ本当の自分の気持ちを伝えてから成仏させます。

で、十数年経って生まれ変わった明穂と出会ってハッピーエンド。

・・・しかしこちらも、主人公に対する思いとか、一度死んでからもう一度幽霊として舞い戻ってきた本当の意味など
もっと語られるべき所はあっただろうに、かなり不透明なまま終わってしまいました。

明穂だけ最後まで本当の心の内が語られずに終わっているので、その辺は想像するしかありません。
若しくは最初からそのつもりで作られたのかもしれません。だからこんな風に脳内補完しておきます。

一度大好きな人と別れる辛さを経験した「幽霊」だからこそ他のヒロインたちの苦悩を深く理解し、
たとえ自分を殺したり、自分に深く嫉妬したり、自分を成仏させる運命にある人であってもそれを許した。
そして何より、一生側にいたいほど主人公を信頼しているからこそ、心置きなく応援する立場に回ることができた。
「主人公と一緒にいたい。」その前に「主人公に幸せであってほしい」から、その唯一のワガママは
自身のルートでだけ打ち明けた。唐突に見えるハッピーエンドはその思いが報われたものである。
そしてまた主人公も、「明穂と一緒にいたい。」その前に「明穂に幸せであってほしい」から、
これからも明穂の応援を胸に、明穂とできなかったこと、幸せな日常を過ごすことを決意したのである。


誰でもプレイすればこういうメッセージに至るのではないかと思うのですが、
前述のとおりかなり不透明なまま終わるのでNYAON氏が何を思って書いたのか明らかにはなりません。
この辺が賛否両論の評価に繋がっているような気がします。


CG・・・19/20点

エロゲなのに目の大きさが普通で塗りが淡いという特徴的な絵ですが、こういう雰囲気のゲームにはまさにピッタリ。
枚数はそれほどでもないですが、クライマックスシーンにCGが多く配置されてるのは嬉しいところ。

各所で絶賛されている立ち絵。
パターンの多さ、動きなどの演出もさることながら、後ろ立ち絵の醸し出す哀愁漂う雰囲気は秀逸。
表情がわからないからこそ伝わる気持ちっていうのを上手く表現していました。


キャラ・・・16/20点

メインからサブまで個性と人情味あふれるキャラばかりで、全員キャラが立ってます。
普通エロゲでは隠しがちな心の闇まで描いていたのが印象的。

ただ主人公が未熟すぎ。萌えゲー主人公でもやってろってぐらい情けない。
ほとんどヒロインたちだけで話を進めていくので完全に空気。もはやいらない気もする。


ボイス・・・10/10点

文句のつけようのないキャスティング。
日常の演技にも修羅場の演技にも非常に気合が入ってる感じがしました。

樋口氏の手がけるクラシック調のBGMと、WhiteLipsさんの歌う主題歌・挿入歌も天下一品。
終盤の挿入歌+CGによる演出にはグッとくるものがありました。


システム・・・7/10点

このゲーム最大の難点、共通ルートの長さ。そしてそれを助長するスキップの遅さ。
立ち絵が動いたりする演出が多いせいか結構ひっかかりがあり、共通ルート全て飛ばそうとすると
結構な時間が掛かってしまいます。問題はそれだけですが、かなりの痛手。





Total・・・88/100点

もうね、CGだけ見てもOPだけ聞いても泣けてくるんですよ。
プレイ中知らないうちに鼻水が垂れてくるぐらい泣きじゃくりましたから。

でも名作に一歩及ばなかった理由は、やはり物語の根幹となるべきはずの明穂の心情描写の薄さ。
「想像におまかせする」手法も悪くありませんが、特に珠美ルートはもう少し心の移り変わりを書いて欲しかったです。

良作であることは間違いありませんが、たまに見かける低得点感想にあるように「あざとさ」が見えるのも事実。
泣かせるために計算しつくされた登場人物の死は当然不快になることも有り得るので、
その辺は自分の性格をしっかり理解してどうぞ。

テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム

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