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「余命半年」
「死生観」騙されましたよ、良い意味で。
シナリオ・・・35/40点序盤で友人に病気のことがバレてしまい、みんなで絶望感と焦燥感を共有しながら思い出を作り、
最後はみんなに暖かく見送られ、思い出を胸に友人達は強く生きて行く・・・
題材だけ見てそんな話を予想していたんですが、中盤の展開に大きな違いがありました。
この物語のポイントは
「知らないフリ」。
第5話までに登場人物全員が主人公の病気に気付きますが、
主人公(はじめ)は周りの人に気遣いをさせまいと自分の病気のことなど知らないフリ、
友人達は病気を知っても「はじめが言いたくないのなら」とはじめに対しては知らないフリを通します。
そこで出てくるのが
複数視点。
実は病気を知っている上で接している友人達と、友人達は自分の病気を知らないと思って接する主人公、
両者の視点からその微妙なズレが細かく描写される構成はまさに匠の技。
そこで悔やまれるのが、本来作品の核となるはずの、病気が偶然「バレる」シーンと自ら「知らせる」シーンがお粗末なこと。
診断書放っておいたからバレた、発作を見られたから正直に告白した、メインに据えるシーンとしてちょっと単純過ぎ。
日常シーンを明るく軽くいつもどおりに保とうとするのはいいけど、そこだけは差別化してほしかった。
で、個別ルート。
展開はルートによって幼馴染・ヤンデレ・嫉妬・家庭問題と非常にバリエーションに富み、
所謂「泣き所」も、主人公が「死にたくない」と打ち明けるシーン一辺倒ではないので飽きと既視感が来ません。
デキは後輩と部長が双璧で、美那、ひかり、詩さんと続く感じでしょうか。
せっかく序盤から積極的に手芸部を絡めてきたのに、「タペストリー」が根幹に関わるのが美那と部長だけなのがもったいない。
その2ルートがよかっただけに。
全ルート綺麗な感じにまとまってますが、醜い部分もしっかり見せていたし、
何よりも奇跡に頼った行き過ぎたハッピーエンドに持っていかなかったことが功を奏しています。
展開にイライラはすれども、終わってみれば
「これで良かった」と思える。
こんな死に方できたら理想ですね、ほんとに。
キャラ・・・15/20点主人公も含めて、優しすぎて気を遣いすぎて、そして結局迷惑をかけてしまうという人たちの集まり。
複数視点で上手くその真意を伝えているわけですが、肝心の主人公の心情描写だけがどうにも浅い。
そのためこちらから見えないところで気が変わり、そのまま突っ走ってしまうことがしばしば。
そこで、全て知っているのに知らないフリをしたり、意地を張ったりして真意を読み取りづらい主人公に代わって、
主人公が全面的に頼ることができる主治医と両親が「現実」を示す上で非常にいい働きをしています。
特に、温かく見守りつつ大事なところで一歩踏み込める両親は、エロゲには非常に珍しく新鮮でした。
CG・・・20/20点正直驚きました。まさかここまでマッチするとは。『Dies irae』よりも少しクセが抜けて、萌えゲーとは差別化しつつ泣きゲー向きの淡い絵柄に変わりました。塗りとのマッチングも◎。
枚数が少ないのが残念ですが、入れるべきところに渾身の一枚を入れてきている感じ。
また、泣きゲーにおいて重要になってくる「泣き顔」の表現が特に素晴らしいなと。
同じ「泣く」でも、笑わなきゃいけないのに泣いてしまう、今は泣いていいときだから思いっきり泣く、
テキストの上手さもありますが、内に籠められた二つの心情をそれぞれ見事に表現していると思います。
ボイス・・・10/10点とりあえずコレだけは言っておきたい。
樋口秀樹の名に釣られて買って本当に良かった。曲の良さは言うまでもなく、さすがに泣きゲーは十八番といったところか入れるタイミングがニクい。
それほど細かく作品とリンクした歌詞というわけではありませんが、
「逃げてばかりの私が 交わした小さな約束 "また明日"」
「願ったのは ありふれた普通のことなのに」
など、なんとなく作品内の登場人物を暗喩している歌詞。
主人公のことが好き、という気持ちが溢れ出す挿入歌と、少しだけ後ろ向きになるエンディング曲。
どちらも作品の一部、というか大部分として十二分に機能していました。
システム・・・7/10点AWBSという、吹き出しと立ち絵の動きによってテキストが展開される新システムを導入。
同時に喋るときにわかりやすかったり、声のトーンが視覚的にわかったりしてなかなか面白いんですが、
いかんせん
重い。そして読みづらい。小説よりもエロゲに慣れた目にはまず
縦読みの時点で致命的。
サウンドノベルのように読み込むような話ではなく会話中心で展開されるストーリーであるため、
テキストと同時に絵の方も目で追わなければならないので慣れないうちは苦痛。
じゃあ逆にメリットは?というと、やっぱり
HシーンでCGが被らないこと。
そこは「おっ」と思いました。そもそもシーン数が少ないのでなんとも言えませんが。
Total・・・87/100点lightって『R.U.R.U.R』『潮風に消える海に』『群青の空を越えて』みたいな「クソゲー」ならぬ「クセゲー」を良く作るし、
そのうえ「クセゲー」の中に「クソゲー」も半々ぐらいの確率で紛れているギャンブルメーカーなんですが、これは
当たりのほう。
なーんか違和感を覚えるのは、物語の展開に理由付けがなくて、
ただ登場人物がそのとき偶然起きたこと、湧き上がった感情に行き当たりばったりで対応していくだけだという点。
現実世界=シナリオのないものについてはそれがリアルなのかもしれませんが、
読み物であるエロゲなのだから、もっと起こる「現象」の方を動かして流れを「作って」しまってもよかったと思います。
でもまあ
泣きじゃくったやつが偉そうに言えたことじゃないし、そこだけかな、不満は。
CG・挿入歌・エンディング曲まで全て駆使して泣かせてくる演出はかなりの高レベル。
死生観メインと見せかけて非常に話がよく動き、どこにメインテーマを置いていたのかよくわかりませんでしたが、
何処か僕の中の意識を変えそうな作品ではあります。良作。
ED『ふたり』は名曲。優しいピアノの音色がたまりません。
テーマ:美少女ゲーム - ジャンル:ゲーム